東浩紀、朝日新聞社を爆破す(笑)
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/07
- メディア: 雑誌
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「新潮」2007年10月号に掲載された東浩紀さん+桜坂洋さん作「キャラクターズ」のキャラクター小説としての感想です。ネタバレありです。すでにタイトルでネタバレしていますが。(笑)
言葉に世界を革命する力はあるのか?
純文学の転換期に投入された爆弾としての<批評のキャラクター小説化>。
東浩紀+桜坂洋
「新潮」2007年10月号目次
途中、二回ほど爆笑できました。素直にエンタメ小説として笑える出来になっています。が、疑問点もかなりあります。
物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」 (角川oneテーマ21)
- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 新書
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- 作者: 谷川流,蒼魚真青
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2003/08/01
- メディア: 文庫
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- 東浩紀さんは最近の桜庭一樹さんの作品を「私小説」あるいは「自然主義リアリズムの作品」として解釈しています。桜庭作品が文芸賞の候補になったのも恐らくは「私小説」としての評価によるものでしょう。でも、本当に桜庭作品は私小説でしょうか? 少なくとも私個人の解釈では違います。例えば「推定少女」「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「少女には向かない職業」の3作品。これらの作品の主人公は、作品ごとに名前と細かな設定は異なるものの、物語を背負わされる前の時点、「テヅカ・イズ・デッド」の「キャラ/キャラクター」の概念で言えば「キャラ」の時点ではほとんど同一とみなせます。そして個々の作品では「キャラ」が「キャラクター」へと至る1つの物語を書きつつ、3作品で3人のキャラクターと3つの物語の結末、つまりマルチエンディングを描いています。これは「ALL YOU NEED IS KILL」のような、単一作品の中で複数の物語を書きつつ、メタ視点の導入で単一の結末を描く方法とはまた別の、物語を横断していくキャラクターとしての特性を活かした「ゲーム的リアリズム」の実現方法ではないのでしょうか。でもまぁ多分、東浩紀さんは「推定少女」「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「少女には向かない職業」の主人公たちが同一キャラに見えないんでしょうね。そこは主観の問題なのでしょうがなさそうです。
- 作者: 桜庭一樹,高野音彦
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2004/09
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- 作者: 桜庭一樹,むー
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2004/11
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- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/22
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- それで何が言いたいかというと
東浩紀さんと桜坂洋さんは、「キャラクター小説でなにができるか」という面で、まだ3〜4年前の谷川流さんや桜庭一樹さんに追いついていないのではないか、と思います。でもまだ別に遅くはないです。論理とキャラクターは時間を超えられるのです。ということで桜坂さん、早く新作をまとまった形で発表してください。
- メモ:「キャラクターズ」虐殺リスト(敬称略)
- 参考