「キャラクターズ」についてのメモ
「新潮」2007年10月号に掲載された東浩紀さん、桜坂洋さん共作「キャラクターズ」についてのメモ。
- SRIの三対構造がメタの連鎖を防ぐ?
ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 (講談社現代新書)
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/03/16
- メディア: 新書
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「動ポモ2」の中で「ゲーム的リアリズムとして解釈できる作品」として挙げられていたものはいずれもメタ構造を持っていました。複数の物語が並行して進行し、最後にそれらを俯瞰する上位視点が導入されることで物語が収束される形式です。
一方、「キャラクターズ」もメタ構造を持っていますが、それは作者の東さん、桜坂さんが作中に登場するという意味でのメタであり、東浩紀さんが東R、東S、東Iに分裂した後では、そこからさらに3人の東さんを俯瞰する上位世界の視点は導入されません*1。代わりに(「新潮」の)35ページにおいてラカンの「ボロメオの結び目」でSRIの三対構造が説明され、3人の東さんが相互に影響していることが解説されます。
この三対構造は「動ポモ2」では出てきていませんでした。「動ポモ2」出版の後で、ゲーム的リアリズムと組み合わせることを考えられたのでしょう。メリットとしてはいたずらに上位視点を導入することを防げることでしょうか。上位視点があるなら、それをさらに上位から見る立場もあるはずで、それを繰り返していくときりがありません。三対構造ならば互いに同レベルで複数の物語・複数のキャラクターをメタ視できるはずです。
- 感情のメタ物語的詐術
「動ポモ2」の中で「ゲーム的リアリズム」を実現する手段として説明されていたのが「感情のメタ物語的詐術」。小説は一本道なのに、メタ視点によって読者を作中に引きずり込んだ上で、あたかもプレイヤーキャラクターと同化した読者自身が選択肢を選んだように錯覚させるテクニックです。
「キャラクターズ」ではこの「感情のメタ物語的詐術」が意図的に使用されています。
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- 東浩紀Sの場合
49ページあたりからの「男」と「モノトーンの女」が示す選択肢が相当します。
「男」が自然主義リアリズム・私小説、「モノトーンの女」がまんが・アニメ的リアリズム・キャラクター小説を代表しているのだと考えます。
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- 東浩紀Iの場合
46ページの幼女かタンクローリーか、の選択肢が相当します。53ページの東Sによる解説では
となっています。
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- 東浩紀Rの場合
57ページあたりから、東Rが東Sに説得される場面が相当するでしょうか。特に60ページ上段の東Sの遺言。あるいは東Iが朝日新聞社への突入に成功したシーンかも。
- 他の作品をSRIの三対構造で解釈したらどうか
「キャラクターズ」の場合、SRIの三対構造を用いた感情のメタ物語的詐術は意識的に作品制作に使われています。けれども既存の作品の解釈にも使えそうです。次の作品などに当てはめて解釈してみたら面白そうです。