素晴らしき勝負の描き方

 銀盤カレイドスコープの6巻、買ってきて一気に読みました。

 完成度は1、2巻に譲りますが、迫力はこちらの方が上かも知れません。フィギュアスケートを題材にしてこれだけ迫真のストーリー&描写が書ける人は、たぶん今の日本で海原零さんだけです。フィギュアスケートについて猛勉強すれば同じレベルのものを書くことが可能な作家さんはもちろん居るでしょうが、現時点では海原零さんだけでしょう。そのことに大きな価値があります。

 前半のシリアスな人間ドラマ、後半の緊張感あふれる華麗な試合、勝負の非情さを思い知らされるラスト、どれを取っても素晴らしいですね。これが勝負なんです。全力でぶつかって勝ち負けを決めるから熱狂するんです。そして勝てなかったキャラも2位に、あるいは3位に、4位に、5位に、6位に…何位だって構いません、それぞれ自分が出した結果に対して何かしら得ているものがあります。みんな自分に突き付けられた現実に向かい合って進んでいきます。この描写がたまらないですね。なかなか他の作品ではみられないものだと思います。

 試合部分のページ配分をもう少し工夫できなかったかな、と思いますが、それを差し引いても十分楽しめる出来でした。シリーズ化された時は「大丈夫かな?」と結構不安でしたが、いやいや、実に読み応えのある作品になりました。思えば、この作品って全然「ライト」じゃないですね。(笑)

 次巻が楽しみです。