突然エンジンのおはなし

先日、羽海野さんは、僕のガレージにある模型飛行機を見て、「プロペラが小さいですね」と言った。今までここへ来た人で、それを見抜いた人はいない。ラジコンの特にエンジンを搭載している飛行機は、エンジンが小型化し、高回転化するため、必然的にプロペラが小さくなるのである。実物のスケールどおりのプロペラを回せない。彼女の観察眼が非凡であることもあるが、やはり、「道理が見える」人がいるということ。--http://blog.mf-davinci.com/mori_log/index.php

エンジンが小型化しても、燃焼速度(ガスの膨張速度?)は変わらないため、ピストン速度は低下せず、回転速度が上がる、という感じ?船舶用のレシプロエンジンは、ドラム缶のようなピストンがゆっくり動くとか。


REVの日記-非凡な観察眼
http://d.hatena.ne.jp/REV/20060720#p1

 燃焼速度も関係あるでしょうが、回転数で支配的なのは恐らく

  • ピストンの構造的・熱的強度の問題
  • エンジンの用途の問題

ではないかと思います。模型飛行機のエンジンは実物の航空機のエンジンよりストロークが小さいですから同じ回転数でもピストンスピードが遅くなります。単純に考えると次の様になります。*1

  • 縮尺1/10のエンジンは
    • ストロークはそのまま 1/10。
    • 排気量は3次元なので (1/10)X(1/10)X(1/10)=1/1000。
    • 回転数が実物と同じだと
      • ピストンスピードはそのまま 1/10。
      • パワーは (排気量1/1000)X(回転数 実物と同じ)=1/1000。
    • ピストンスピードが実物と同じだと
      • 回転数は10倍。
      • パワーは (排気量1/1000)X(回転数10倍)=1/100。

 ピストンスピードが遅くなると、シリンダーとの摩擦が減ってピストンが熱的・強度的に楽になります。その分、回転数を上げる→パワーを上げられるのでしょう。さすがに回転数を10倍にするとピストンよりも前に他のところが壊れそうですが。4サイクルエンジンだと吸気・排気バルブが最初に回転について来れなくなりそうですね。スケールによって弱点が変わるのが工学の面白いところです。

  • 船舶のエンジンは回転数が低い。でもピストンスピードは?

 ストロークが短いとピストンは楽ですが、燃費は悪くなります(どうしてなのかを説明するととっても長くなるのでエンジンの本を読んでください。)。船舶のエンジンはサイズはでかくても良いので燃費を重視する傾向にあり、ロングストローク+低回転です。この場合は燃費を稼ぐためにストロークを長くしたいので結局ピストンスピードが高くなる→ピストンの強度がネックになりそうです。船舶のエンジンも結構ピストンスピードが高いのかも知れません。*2

  • 追記(7/22)

 どうもピストン単体の強度より、ピストンとシリンダーの間の潤滑の方がピストンスピードを決めているようですね。そして大きなエンジンでも小さなエンジンでも、最高回転数でのピストンスピードはあまり変わらないようです。

*1:実際には回転数が10倍だからパワーが即10倍という訳には行かないでしょうが

*2:ただし同じ材料・構造でも大きいものほど強度が落ちるものなので、一概には言えないのかも知れません。