ポプラ社は児童文学のラノベ化に消極的だったのか〜「ライトノベル化する児童文学」に対する疑問

ポプラ社ポケット文庫(ポプラ社


ポプラ社本体は2003年末に月刊プレコミック ブンブンの出版によって漫画に参入するなど、多角化に活発な動きを見せる一方、児童文学のラノベ化には随分と消極的で、実際それらしい作品の登場は、中学生対象は「Dreamスマシュ!」。小学生対象は「ポプラ社ポケット文庫」のDRAGON BATTLERS 闘竜伝の発売された2006年10月まで待たねばなりません。


ゆーずー無碍たる日記-ライトノベル化する児童文学(その3)
http://d.hatena.ne.jp/yuzumuge/20070401/p3

 大変興味深く、参考になるエントリーではあるのですが、ポプラ社に関しては異論ありです。ここ数年で見ればポプラ社は児童文庫にまんが・アニメ的イラストを使うことに消極的だったかも知れませんが、1980〜1990年代のポプラ社文庫には「フレッシュ学園文庫」「SF・ミステリーシリーズ」というまんが・アニメ的イラストを多用するシリーズ(レーベル)がありました。

    • 「フレッシュ学園文庫」の例

    • 「SF・ミステリーシリーズ」の例

 残念ながらAmazonには書影がないので、表紙の写真を撮って載せます。

「課外授業はおまじないゲーム」のイラスト担当であるさえぐさじゅんさんは、同時期にコバルト文庫ファンタジア文庫でも挿絵を担当されています。「名探偵のドッキリ映画ロケ」の方は文章・イラストともアニメ監督の笹川ひろしさん。それにしても右の表紙は1992年の児童文庫としてはかなり冒険だったのではないでしょうか。

 ちなみに「フレッシュ学園文庫」は1990年6月の創刊のようで、確認できるレーベル第一弾は折原みとさんの「瞳の中の宝物」。

 これ、同時期に折原みとさんがX文庫ティーンズハートから出していた本と見分けがつかないですね。

時の輝き (講談社X文庫―ティーンズハート)

時の輝き (講談社X文庫―ティーンズハート)

 そして1992年11月に、わずか計15点で終了しているようです。

 一方「SF・ミステリーシリーズ」は1986年8月創刊のようです。

 こちらは「フレッシュ学園文庫」よりは成功したようで、1993年8月までに70点前後が刊行されたようです。

 ひょっとすると「フレッシュ学園文庫」「SF・ミステリーシリーズ」以外にもこうしたまんが・アニメ的イラストを使った児童文庫が当時あったかも知れません。ともかく、ポプラ社は「児童文学のラノベ化に消極的」だったとは言えなさそうであります。

 しかし時期尚早だったのでしょうか、「フレッシュ学園文庫」も「SF・ミステリーシリーズ」も終了後、忘れ去られてしまったのです。いや、私も最近まで知らなかったので偉そうなことは言えませんけれど。