絶望系から始めよう

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　投票の結果、栄えある得票1位は谷川流さんの「絶望系 閉じられた世界」になったようです。

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

　これは確かに奇特な作品でありまして、正統派エンタメの尺度から見れば落第でしょう。ですが私のように「この作品を書くとき、作者は何を考えていたのだろう」と考えるのが好きな人にとっては「絶望系」はとても面白い作品でもあるはずです。

「絶望系」では「ボクのセカイをまもるヒト」とともに「キャラクター＝舞台で役割を演じるための装置」という谷川流さんの考え方がはっきり出ています。この考え方は多分「涼宮ハルヒ」の根底にもあるのです。見えにくいだけで。

　それから集合的無意識や本能でさえ、物語の中では、物語の並列的・相対的な要素でしかないらしいですが、うーんなんとも…(笑)。「ブギーポップ」を読んだときに「上遠野浩平さんのひねくれ方は凄い」と思ったものですが、「絶望系」で「一本足の蛸」や「絶望こそが絶対的立場」という考え方が出てきたときは「あ、谷川流さんは良くも悪くも『ブギーポップ』を突破できるんじゃないか。その先へ進むことができるんじゃないか」と思いましたよ。思っただけでまだ結論は出せていませんが。

　見方によっては「絶望系」はライトノベル・キャラクター小説の悪いところばかりを集めた作品ではあります。けれども、そうやってこれ以上駄目なものがないような、ペンペン草も生えない不毛な行き詰った処まで突き進むことも必要ではないかな、と思うのです。そこまで降りてから見上げなければ見えてこないもの、そこからでなければ始められないものが、きっとあるはずです。