「狼と香辛料」は各シーンの最後の一文で読者への印象をコントロールしていたのだった。
「狼と香辛料III」読了。
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2006/10/10
- メディア: ペーパーバック
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3冊目まで読んでようやく気付いたのですが、このシリーズはシーンの最後の一文が大抵
・・・・・・たのだった。
で終わります。またシーンの途中ではこの「・・・・・・たのだった。」はほとんど使われません。
そのため「・・・・・・たのだった。」が来ると、あ、ここで一区切りなんだな、と分かります。また、この「・・・・・・たのだった。」がこのシリーズの地の雰囲気、うまく言えませんが中世の原野を旅しているような雰囲気を醸し出すのに一役かっていますね。最初はそれくらいに思っていました。
が、どうもそれだけではないらしいです。というのもクライマックスや急展開のシーンでは「・・・・・・たのだった。」はあまり使われていないのです。まぁ、アクションシーンで「・・・・・・たのだった。」では落ち着きすぎて盛り上がらないので当然といえば当然なのですが。で、ものは試し、各シーンの最後の一文だけを読んでみたのですが、おお、話の筋は分からなくても、あ、ここがターニングポイントだ、ここがクライマックスだ、というのが大体分かるんですね。あと、特別に印象付けたいシーンでも「・・・・・・たのだった。」以外の終わり方をしています。1巻のラストとか。
「狼と香辛料」は主人公ロレンスの視点で書かれています。ということは地の文の終わり方もロレンスの心理を反映させたものだと言えるでしょう。それはそのまま読者の印象へと直結する訳ですから、「狼と香辛料」は最後の一文の描写を変えることで、読者の印象を効果的にコントロールしていると言えるのではないかと思います。
・・・・・・全然違ったりして。(自信なし(^^;)