「まぶらほ」について熱く語らされました

もともとメイドの巻→bk1→amazonもっとメイドの巻→bk1→amazonだけを購入していたんですが、そのうちにオフ会でぎをらむさんまぶらほについて実に熱く語られ、読み進めることになったのでした。

 まいじゃー推進委員会「心に残るあの台詞」2005年11月10日(木)より。

 おはようございます。熱く語ったらしい、ぎをらむです。

 なんだか上の極楽トンボさんの文章だけを読むと、私が「ばんつはいてないとか「もっともっとメイドさんについて力説していたと思われてしまいそうです。それは誤解というものです。私は「大コスプレ主義と小コスプレ主義の意義」など語りませんでしたし、「メイドとの対立軸としてパジャマを持ってくるのは違うのではないか」と疑問を呈することもありませんでした。ましてや「今思えばメインヒロインはツンデレで行くべきだったのではないか」などとは一言も言っておりません。本当です。信じて下さい。

 私の記憶が正しければ、極楽トンボさんに「まぶらほ」について語ったのは4月のLNF(ライトノベルフェスティバル)の時と10月の京フェス京都SFフェスティバル)の時だったと思います。それは大体以下のような内容でした。

予備知識:ファンタジア文庫のシリーズ展開について

 「まぶらほ」について話す前に、まず富士見ファンタジア文庫のシリーズ戦略について手短に説明しましょう。ファンタジア文庫ライトノベルレーベルの中で唯一「ドラゴンマガジン」という月刊誌を持っています。これを利用してファンタジア文庫は長年、特徴的なシリーズ作の刊行戦略を行なっています。それは

 「書き下ろし+連載」によるシリーズ構成

 です。1990年代初めに「スレイヤーズ」で確立されたこのシステムは以後「魔術士オーフェン」「スクラップド・プリンセス」「エンジェル・ハウリング」などに受け継がれ、現在もなお「フルメタル・パニック」「魔法戦士リウイ」「伝説の勇者の伝説」「EME」「ブラック・ブラッド・ブラッドブラザーズ」などで継続されています。

 作品によって差はありますが、基本的には書き下ろしがシリアス、連載がコミカルな内容で、書き下ろしの方がメインのストーリーになっています。

まぶらほ」だってそうだったのではないか

 さて、件の「まぶらほ」であります。

 この築地俊彦さん作、ファンタジア文庫の「まぶらほ」という作品、よく知られているのは「ドラゴンマガジン」に連載され、後に文庫にまとめられて刊行される、いわゆる「本編」というものでしょう。現在11巻まで刊行されています。内容はドタバタのラブコメディーです。

 これとは別に「ドラゴンマガジン」の増刊号「ファンタジアバトルロイヤル」に掲載され、後に文庫として刊行されている「特別編」、またの名を「メイドの巻」というものもあります。「仮装戦記小説」という謎のキャッチコピーが付けられているドタバタコメディーです。現在2巻まで刊行されています。

 と、以上2つがよく知られている「まぶらほ」であります。要するに「まぶらほ」というのは他のファンタジア文庫の人気シリーズと異なり、雑誌連載がメインのコミカルな作品なのです。

 しかしながら、実は「まぶらほ」にはあと1つ、あまり知られていない流れがあるのです。

 記念すべきシリーズ第1巻「ノー・ガール・ノー・クライ」。「世界征服を企む秘密結社にさらわれたヒロインを主人公の男の子が助けに行く」という内容の熱血王道書き下ろし冒険長編です。

 そう、書き下ろしなのですよ。

 ちなみに演出はコミカルですが、ストーリーはシリアスです。ええ、もう「本編」と「メイドの巻」しか知らない方が読んだら「なんじゃこりゃあ!」と思うほどシリアスです。

 この書き下ろし長編は今のところ2巻までしか出ていない(もうすぐ3巻目が出る予定)のですが、私は、

 実はこの書き下ろし長編が本来の「本編」だったのではないか

 と思うのですよね。すなわち、「スレイヤーズ」や「フルメタル・パニック」と同じように「まぶらほ」も「シリアスな書き下ろし+コミカルな連載」で行く「はず」だったのではないかと。

 しかしストーリーを進めなくても良いコミカルな連載に対し、シリアスな書き下ろしはストーリーを進める分、なかなか筆が進まないもののようです。神坂一さんの「スレイヤーズ」にしても、賀東招二さんの「フルメタル・パニック」にしても連載がどんどん書き下ろしに対して先行してしまい、ついには書き下ろし執筆のために連載を止めるという救済措置が取られています。

 ところが「まぶらほ」の場合は「連載を止めない」ことが優先されているようで、書き下ろしの方が進まなくても連載が止められることがありません。このおかげでコミカルな連載分だけがどんどん刊行されて、いつのまにか連載分が「本編」と呼ばれるようになってしまいました。すなわち、

 まぶらほ」はファンタジア文庫の「書き下ろし+連載」によるシリーズ構成のうち、「連載」だけが肥大化したものではないか

 と、あの日私は語ったのでありました。

 コミカルな連載分を優先することでシリアスなストーリーを失っていった(いや、まだ完全に失ったとは言いきるのは乱暴ですが)「まぶらほ」はライトノベルにおける「物語の喪失」を体現している作品かも知れません。