写真がない時代、絵を見るには絵を見に行くしかなかった

  • ここに1枚の絵があります。

モナ・リザへの旅

モナ・リザへの旅

  有名な絵ですね。大抵の方は見たことがあるでしょう。しかし、実はこれは絵ではありません。絵を撮影した写真です。

  • 現代において「ある絵を見る」という場合、絵の実物を見ることより、絵を撮影した映像メディアを見ることの方が圧倒的に多いです。
  • このことは別に絵に限りません。世界の観光地や大事件などでも、自分の眼で見るよりメディアを通じて見ることの方が多いです。ただし世界各地の映像を雑誌や新聞やニュースで見る場合、多くの人はそれがメディアを通じての情報であると自覚しています。けれども、絵の写真を見る人が「自分は絵の写真を見ている」と自覚することはまずありません。
  • ところで、写真もスキャナーもコピーもない時代にある1枚の絵を見ようとしたら、それは結構大変なことでした。自分でその絵が飾られているところに行って、その絵を所有している人の許可をもらって見せてもらうしかなかったからです。*1
  • 一方現代では絵の写真が撮られ、それがさらに印刷されコピーされて世の中にあふれかえっています。絵(の写真)は手軽に見られるものになり、写真が発明される前に人々がどうやって絵を見ていたかなど普段は想像もつかなくなりました。写真を初めとする映像メディアの発達が、人々の絵の見かた、人々の絵に対する認識を根本的に変えてしまったのです。

*1:こうした面倒なことを避けるために絵画とは別に、印刷できる「版画」が発達することになります。