放電映像さんのイラストに見られる変則的な構図について考える
「テヅカ・イズ・デッド」読了。
- 作者: 伊藤剛
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2005/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いろいろ思うことはあるのですが、まず一番に興味を引いたのが「リバースショット」とか「同一化技法」という用語ですね。いえ、「テヅカ・イズ・デッド」の要点は同一化技法ではない(むしろ同一化技法がマンガから失われていくところにある)のですけれど、なにぶん私は素人ですのでまずそういう従来的な部分に「なるほどなぁ」と思ってしまったのです。(^^;
その「同一化技法」とはどんなものかを簡単に説明しますと
- まず人物を映す。
- 次に風景を映す。
- すると鑑賞者はまるで「最初の人物の視点で風景を見ている=最初の人物と同一化する」ように錯覚する。
という技法です。
で、ふと、放電映像さんがしばしば用いる風変わり構図はこの同一化技法の応用なのではないか、と思いました。
放電映像さんの風変わりな構図と申しますのは(Web上に適当なサンプルがなかったので簡単な手書きで説明しますが)下図の左のような、A、B、2人のキャラの正面からの絵が交差して描かれている構図です。
「我が家のお稲荷さま。」では2巻以降でよく見ることができます。
- 作者: 柴村仁,放電映像
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/04/01
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この他に、上図の右のようなA、Bのキャラが180度引っくり返って向き合っている(というのも変な表現ですが)構図も見られます。ただ、右のような構図は実は他のイラストレーターさんの作品でも結構あったりします。こちらにそういう構図ばかり集めてありますので興味のある方は見て下さい。(笑)
で、左の構図の話に戻りますが、この構図で描かれているのは別にキャラが前後に並んでいる場面ではありませんで、向かい合っている場面の描写なんですね。ですから現実にはこんな風に見える訳はないのですが、そこをイラストならではの嘘で演出しているのです。
キャラAとBは実際には向かい合っているのですから、Aの絵はBの視点、Bの絵はAの視点で描かれていると考えられます。つまり左の構図にはキャラA、B双方の視点が入っています。このようにすることで
- 鑑賞者を双方のキャラに同一化できる。
- 双方のキャラを正面から描ける。=見栄えがする。
という効果を狙っているのではないかと考えます。
では、どうしてキャラ同士を並べずに交差させているのか?その理由は次のように考えます。
- 斜めに描くことで紙面の角のスペースまで使える。=キャラを大きく描ける。
- 交差させることでキャラ同士の意思がずれているorキャラ同士が対決しているように見せられる。
4番目の理由ですが、どうもキャラが交差している構図はキャラ同士の意思疎通が取れていないときや対決シーンで使われているようなので、考えてみました。他にも理由があるのかも知れませんね。
それから、この構図を最初に考え出したのがどなたかは存じません。私は放電映像さんのイラストでしか見たことがありませんが、他の方が編み出した技法なのかも知れません。ご存知の方は教えてください。