SOS団が乗ったバス

 谷川流さん著「涼宮ハルヒ」シリーズにおいて、SOS団は何度かバスに乗ります。そのうちモデルとなった路線をほぼ特定できるものを紹介しましょう。

 珍しくもハルヒは俺の時間前遅刻を咎めることをせず、喫茶店に向かうこともしなかった。行ったのはバスターミナルであり、俺はハルヒに背を押されるようにして北へ向かうバスに乗り込まされた。
(中略)
景色はどんどん緑が濃くなっている。
 俺たちを乗せたバスは山を目指していた。先日、宝探しに鶴屋家の山まで行ったものと同じ道程だった。


谷川流涼宮ハルヒの陰謀」374ページ

 この「SOS団の集合場所」から鶴屋山までの移動に使ったバス。「陰謀」の229ページで乗るバスも同じ路線と思われますが、「SOS団の集合場所」を阪急西宮北口駅、鶴屋山を北方の甲山と考えると、西宮北口から甲山方面へ向かう路線ということになります。ではそのような路線があるかと言いますと、たった一路線だけあります。


五ヶ池バス亭の路線図

 阪急バスの西宮北口〜五ヶ池線が西宮北口と甲山の麓の両方を通ります。これはもう乗るしかありません。という訳で乗りに行ってきました。


西宮北口南側のバスロータリー(再掲載)


西宮北口南側3番バス乗り場(再掲載)

 ここから乗ります。上の写真は別の日に夕方に撮影したものでして、実際には夕方に行っても五ヶ池行きのバスには乗れません。なぜなら


五ヶ池バス亭の時刻表

五ヶ池池行きは昼間にしか運行されていないからです。しかも1日4本。昔はもっと多かったらしいですが、年々本数が減っているそうです。この系統のバス自体は決して少なくないのですが、ほとんどが甲山まで行く前に折り返してしまうのです。


阪急バス五ヶ池行き

 という訳で昼間に待つこと数十分、お目当ての五ヶ池行きのバスが来ました。

 JR西ノ宮駅、阪急夙川駅も経由するので両駅から乗ることも可能です。ただし正確な発着時刻を事前に把握しておかないと捕まえるのはかなり難しいですが。

 実際に乗ってみた感想ですが、市街地と山間部で景色も、人の混み具合も、車の混み具合もまるで違いますね。市街地を走る間は結構人が乗り降りしますし、渋滞にも巻き込まれます。しかし獅子ヶ口を過ぎて坂を上り始めると人も車も減り始め、北高最寄りの柏堂あたりで乗客がまばらになります。景色も鷲林寺の手前あたりからすっかり田舎になり、甲山墓園から先は完全に山林の中です。料金均一の市街路線が山の中を走るのは珍しいのではないでしょうか。残った乗客も甲山墓園でみんな降りてしまうので、そこから先は山中を貸し切り状態で走ります。日曜日だと甲山大師前より先は一般車進入禁止のため、バス以外の車も見なくなります。自分一人が乗ったバスがたった一台で山林の中を行くのは、なんだか得した気分です。

  • 高崎兄妹もこのバスに乗ったのかも知れない

 さて、この西宮北口〜五ヶ池線は「学校を出よう!」で高崎兄妹が乗る路線のモデルでもあるのではないかと考えていたのですが、実際に乗ってみて、その考えはより確信に近づきました。

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

 真っ昼間ということもあるのだろうが、バスの乗客は僕一人、プチ貸し切り状態だった。市営でなければ即刻廃線処理されてそうな客の少なさである。
 乗り込んで三十分、幾つかの停留所を経由したがバス待ち顔の利用客は皆無で、信号も黄色を虚しく点滅させるだけの一本道をノンストップで走り抜け、ようやくバスが乗客第二号を乗せたのは緑多き大自然から相当離れて市街地の端っこに到達したあたりだった。


谷川流学校を出よう!」124ページ

 五ヶ池方面から西宮北口行きに乗ったとすると、まさにこの描写の通りになります。市営ではなく私鉄のバスですけれども。「市街地の端っこ」というのは獅子ヶ口か苦楽園口あたりを指しているのではないでしょうか。黄色が点滅する信号も甲山墓園付近にあったような気がするのでまた確認しに行こうと思います。