「ボトルネック」を読み解く無謀な試みのためのメモ
先日の『犬はどこだ』の、あまりまともではない感想ではほとんど「ボトルネック」について考えることができず、安眠練炭さんのご期待に応えることができなかったのですが、肝心の安眠練炭さんはしばらく旅に出るそうなのでその隙に少しでも「ボトルネック」について考えを進めようと思います。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 単行本
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以下の文章は米澤穂信さん著「さよなら妖精」「犬はどこだ」「ボトルネック」の内容に触れていますのでご注意ください。
- 諏訪ノゾミの動き
『犬はどこだ』の、あまりまともではない感想では、私は「ボトルネック」のリョウとサキの関係を「犬はどこだ」の紺屋と佐久良桐子に重ねることに拘りすぎていました。佐久良桐子が「犬はどこだ」の影の主人公であり、サキが同様に「ボトルネック」の影の主人公であることを今でも私は確信しています。しかしリョウの行動はサキよりも、むしろ諏訪ノゾミに関連するものであることに遅まきながら気付きました。
リョウは東尋坊と浅野川河畔公園を行き来しますが、この2つの場所はリョウとノゾミにとって重要な場所な訳です。そしてノゾミはどこから来たのか? そう、ノゾミは地方都市金沢出身ではなく、(金沢に比べれば)大都市である横浜出身なのです。つまりノゾミは
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- 大都市→地方都市(河畔でリョウに打明ける)→東尋坊(地方都市の外部)で弔われる
と動いているのです。さて、これと似たような動きをするキャラクターは米澤穂信作品に居なかったでしょうか? 居ますよね。
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- 旧ユーゴ→地方都市(河畔で守屋と太刀洗と逢う)→山頂の墓地(地方都市の外部)で弔われる
と動く「さよなら妖精」のマーヤです。無論ノゾミとマーヤでは性格が全然違いますが、主人公の成長のための装置としての役割は結構近いのではないかと思います。移行対象っぽいですね。うん、少しずつ「ボトルネック」を読み解く手がかりが掴めてきた気がします。
- 親との確執
「ボトルネック」を成長(と挫折の)物語として読むためには、「都市からの移動」だけでなく「親との対立」という視点が必要な気がしてきました。桜庭一樹さんの作品なんか、しょっちゅう親子で殺し合っているじゃないですか。あれは殺伐とした家庭内暴力や児童虐待とも解釈できますが、私は親殺し子殺しの通過儀礼だと考えたいのです。独断と偏見で。
米澤穂信作品ではこれまで親子の対立はあまり描かれてこなかったように思うのですが、「ボトルネック」ではリョウと両親とのぎくしゃくした関係が描かれています。(ただし両親は直接登場してこないですが。)この方向からも「ボトルネック」を読み解けないかな、と考えております。
今回はここまで。ちなみに次回があるかどうかは定かではありません。