周防長門は山口県
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/03/31
- メディア: 文庫
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「涼宮ハルヒの分裂」の感想です。ネタバレを含みます。
- 百人一首と百人秀歌
114〜115ページに「百人秀歌」というのが登場します。鶴屋さんが長門有希に四首ほどの短歌の下の句を当てさせる訳ですが、これは単なる言葉遊びではなく伏線、もしくは作者が仕掛けたトリックを解くためのヒントである可能性が高いですね。というのも
なのです。これが何を示しているかは、その後を読んだ方にはお分かりでしょう。
- 素直に読めば、分岐シナリオ→メタ視点導入
中盤からシナリオがα、βに分岐しているように読めます。そのまま素直に分岐だと捉えた場合、次巻の「涼宮ハルヒの驚愕」ではシナリオを一つに収束させるために、両方のシナリオを俯瞰するメタ視点が導入される可能性が高いと考えられます。
「ハルヒ」では視点はキョンに固定されているので、そのメタ視点を担うのも当然キョンになります。しかし「α、βのシナリオを俯瞰する」立場にいるのは元々「読者」なのです。つまりこれは読者とキョンを同じ立場に立たせたように見せて、読者を作中に引きずり込むテクニックなのです。東浩紀さんの「ゲーム的リアリズムの誕生」で言うところの「感情のメタ物語的な詐術」ですね。
このテクニックは谷川流さんの十八番で、これまでも「学校を出よう!」の2巻、6巻、「涼宮ハルヒの消失」などで使われています。
- でも、トリックがあるんじゃないかな?
序盤に強引な叙述トリックがあります。これをトリックとかミスリードと呼んでいいレベルなのか甚だ疑問なのですが、ともかく作者は読者を一度だましています。
でもこれは挨拶代わりではないでしょうか? 実はまだトリックが隠されているのでは? 例えば……
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- シナリオ分岐は本当に中盤から始まったのか?
- そもそもシナリオは本当に分岐しているのか? どこに「分岐した」なんて書いてある?
- αシナリオとβシナリオで上下方向の位置が違うのは何の意味がある? 入れ子構造?
- いや、時系列を操作しているのかも?
谷川流さんはミステリーにはうるさい人のようですので、仮にトリックを仕掛けているとすればそれを解くヒントもすべて作中に配置してあると思います。いわゆる「フェア」ってやつですね。
というわけで、しばらくヒントを探してみたいと思います。
- その他