猫の寓話〜冬の巨人

 古橋秀之さんの「冬の巨人」の感想。少々ネタバレあり。

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

 とても爽やかな青春ものでした。

 この作品はあとがきによると「”破滅と再生の寓話”という感じ」で書かれたそうです。この「破滅と再生」というのは「冬の巨人<ミール>」はもちろん、作中の色々なキャラクターを指しているのだと思いますが、私は特にオーリャの家に住みついている猫、アンドリューシャのことが気になりました。

 「破滅と再生」を「死と生」と読みかえるなら、アンドリューシャはウーチシチとともに間違いなく「死」の役割を担っているキャラクターです。

 ディエーニン教授がオーリャの父役だとするなら、ウーチシチはオーリャの兄にあたる役だと思います。兄弟でウーチシチが死、オーリャが生を受け持っているのではないかと。

 一方、アンドリューシャはオーリャの「家」を象徴する存在でありましょう。母親代わりとも言えるかも知れません。オーリャが部屋および外市街を出て行くのと、アンドリューシャの死とが同時なのはそのためです。また、アンドリューシャは冬の巨人そのものとも言えるでしょう。アンドリューシャの衰弱と死は明らかに、冬の巨人のそれと重ね合わせて捉えることができます。

 しかしなによりも冬の巨人の姿かたちが「アンドリューシャ=冬の巨人」であることを物語っています。賢明な方は既に私が言いたいオチにお気付きでしょう。そう。


 冬の巨人は猫背なのです。