夫婦岩の真相

 西宮市の市街地北部を走る県道の真ん中に、「動かすとたたりがある」と地元で言い伝えられる大きな岩がある。工事のために動かそうとした関係者が相次いで亡くなった-といううわさがその根拠。

 上記の新聞記事で取り上げられているのは西宮市鷲林寺町にある夫婦岩という岩です。「学校を出よう!」1巻で高崎兄妹が下りる道のモデルである県道82号大沢西宮線にあるので十回くらい見たことがあります。こんな岩です。


 雪を被った夫婦岩。2008/2/9撮影。

 しかしながら、

兵庫県西宮土木事務所は「ないがしろにできない」と、岩を避けて整備する異例の対応を決めた。
(中略)
県は夫婦岩の南北約一キロの区間で拡幅工事を計画。夫婦岩を動かさないように道路全体を西側にずらす形で設計した。

という記事は、ウソではないにしても、少々誤解を招く表現であります。これでは県道全体を岩の西に付け替えるのを決定したのは最近のことのように読めてしまいます。ところが、

↑上のグーグル先生の航空写真を拡大すると、西側に道路工事の跡が残っているのが見えます。国土画像閲覧システムの1974年の航空写真でも、すでに西側で県道の付け替え工事が行われていたことが確認できます。この道路工事は南西の鷲林寺町地区の造成と連動して行われており、また国土変遷アーカイブの1971年の航空写真で鷲林寺町の造成が既に始まっていることから、1971年には県道を西側に付け替えることが決定していたことはほぼ確実です。今から38年前のことです。

 この工事は1979年(の航空写真)までは進捗していることが確認できるものの、1980年代に入ると止まってしまいます。多分、今と同じく財政難が原因でしょう。そのまま最近まで放置プレイされていたのであります。

 一方、兵庫県神戸新聞は、本来ならとっくに終わっていなければならなかった工事には触れずに、良い面だけを見せているようにとれます。これでは「たたり」うんぬんは、工事が中途半端に止まってしまった責任をうやむやにするために流されたデマではないかと勘繰ってしまいます。

 ところで

「これまで事故がなかったのは奇跡的。今回の整備で安全性が高まる」

とのことなのですが、「安全性が高まる」のは分かるとしても、「事故がなかった」のは本当でしょうか。


 夫婦岩の南西側に、欠けてから月日が経っていない部分がありまして、私にはまるで大型トラックがぶつかった跡のように見えるのですが。うーむ。