角川の新書ライトノベルの流れ

グリンディエタ


 のべるのぶろぐさんの『「越境」するライトノベル:第一章』
 http://novel.no-blog.jp/minkan/2005/10/post_884b.html
ですが、イマイチ私にはピンとこないです…いえ、こうした話題を出されること自体は大いにやって頂きたい訳ですが。(別にのべるのぶろぐさんを批難する意図はありませんので(汗)。)

 CAXさん田中芳樹さんが講談社ノベルズや徳間ノベルズで作品を発表していたことを指摘されていますが、私は角川の新書版ライトノベルへの意気込みもなかなかのものだったのではないかと思います。

 角川書店には「カドカワノベルズ」という新書レーベルがありました。(今でもあるのかな?)その中に「カドカワファンタジー」というレーベル内レーベルができ、これがやがてスニーカー文庫の兄貴分である「カドカワハードファンタジー」や「スニーカーブックス」へと続いていきました。

 

 まず新書版一般小説のレーベルであった「カドカワノベルズ」で、角川文庫青帯、角川スニーカー文庫富士見ファンタジア文庫でも書いている作家さんの作品が出ていました。ちなみに、「カルナー」は角川文庫、「自転地球儀」は徳間デュアル文庫で復刊されています。

 

 1991年頃に「カドカワノベルズ」の中で「カドカワファンタジー」というレーベル内レーベルが作られ、ライトノベルっぽい作品がそちらに分けられました。amazonでは56件ヒットします。「木の国の媛」は後に徳間デュアル文庫で復刊。

 

黒い季節

黒い季節

緑の戦士 花の騎士るか

緑の戦士 花の騎士るか

 スニーカー文庫の兄貴分のような感じでできた、珍しいハードカバーのライトノベルレーベル。「角川書店新書判ハードカバー」シリーズとも呼ばれます。20点出ました。私の知る限り、ライトノベル史上最も刊行点数の多いハードカバーレーベルです。冲方丁さんのデビュー作はここでした。今は電撃のハードカバー攻勢が話題になっていますが、角川も10年前にこういうことをやっていたんですよ!

 「ライトノベル・ファンパーティー」で刊行リストを作っていますので興味の有る方はどうぞ。
http://lanopa.sakura.ne.jp/project/hardcover.html#hardnovels

 

  • スニーカーブックス(1997年〜2000年)

やさしい竜の殺し方 (スニーカーブックス)

やさしい竜の殺し方 (スニーカーブックス)

月と炎の戦記 (スニーカーブックス)

月と炎の戦記 (スニーカーブックス)

 「カドカワハードノベル」を引き継ぐような形で刊行されました。amazonでは22件ヒットします。「やさしい竜の殺し方」「月と炎の戦記」とも今はスニーカー文庫から出ています。

 という訳で1990年代に「カドカワファンタジー」「カドカワハードノベル」「スニーカーブックス」で98点、「カドカワノベルズ」時代も合わせると100点以上の新書版ライトノベルが角川から出ていました。文庫レーベルと並行してこうした新書レーベルの流れもあったのです。残念なことにこの流れはライトノベルブームを待たずに2000年で途切れてしまったようで、ライトノベル解説本でもあまり触れられていないのです。