SOS団は「ライトノベル」を書かない―言及しないことによって言及するメタ・フィクション
ザ・スニーカーに掲載された涼宮ハルヒシリーズの意味深な中編「編集長★一直線」についての勝手な深読みです。ネタバレありです。(って現時点で読める人はほとんどいないじゃないか…)
「編集長★一直線」には「ライトノベル」という言葉は1度も出てきません。しかしSOS団が作る文芸部会誌のジャンルには、谷川流さんの「ライトノベル」に対する意識が反映されているようです。まずは文芸部会誌でSOS団のメンバーに執筆を割り当てられたジャンルを見てみましょう。
これに、実際には誰にも書かれませんでしたがハルヒとキョンが意識していた
- SF(ただしハルヒが「断腸の思い」で削除)
も入れましょう。さらにSOS団以外で次のものが書かれています。
- 冒険小説(鶴屋さん)
- エッセイ(谷口)
- コラム(国木田)
- レビュー(コンピ研団長)
ここまできて、おや?と思うことがあります。そう、「涼宮ハルヒ」シリーズ自体がライトノベルなのに、SOS団は「ライトノベル」を書いていません。鶴屋さんの冒険小説はライトノベルっぽいようですが、「ライトノベル」とは表記されていません。いや、普通に考えれば、文芸部の会誌を作っている時にジャンルとして「ライトノベル」を思い浮かべることはないと思います。
しかしながら谷川流さんは「ライトノベル」を意識していない訳ではありません。むしろ思いっきり意識しています。それはコンピ研団長が書いたレビューの次のタイトルから明らかです。
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まさか、解説本をネタにするとはなぁ〜。
谷川流さんが何を思ってこんなやばいネタを出したのかは定かではありませんが、(ただのブラックユーモア?)谷川流さんにとって「ライトノベル」というジャンルは、「ホラー」や「ミステリー」や「童話」といったジャンル分けとは同列に扱うべきものではないのかも知れません。
あるいは谷川流さんは「ライトノベルのキャラが作中でライトノベルを読み書きする」のは禁則事項だと考えているのかも知れません。「ライトノベル」の中では「ライトノベル」というジャンルに言及できないので、レビューのタイトルというひねった形でちらっとだけ見せた…ともとれそうです。
ともかくも「編集長★一直線」は、谷川流さんの「ライトノベル」に対する考えを垣間見せてくれる楽しいメタフィクションだと思います。