「赤×ピンク」以降の桜庭一樹作品をゲーム的リアリズムの実現方法から分類してみる

 野性時代Vol.26
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200310-02/
の特集「大人のためのキャラクター小説〜ライトノベルのその先へ」に掲載されている桜庭一樹さんのインタビューを読みました。なかなか興味深いことが書かれています。インタビューによると

  • 「赤×ピンク」の3人の主役は、元々1人のキャラクターを3つに分割して作ったものである。
  • 同じ手法を「赤×ピンク」以降も使っている。

とのことなのですが、これは

 桜庭さん曰く「マルチエンドを全て含めて1つの話を作りたい」「それがゲーム的にとらえられるかも知れません」

京フェスリアル・フィクションとは何か?」レポ
http://d.hatena.ne.jp/giolum/20051012#1129053212

と同一線上にある発言ですね。もう私はほぼ確信しているのですが、桜庭一樹さん作品は、東浩紀さんが唱えている「複数の私と複数の物語で現実を捉えるゲーム的リアリズム」で捉えることが可能だと考えます。つまり「赤×ピンク」を「3人の私と3つの物語で現実を捉える」作品と解釈してみる訳です。

 ところで、『「赤×ピンク」と同じ手法』がその後の作品でどう使われているかですが、これについてのヒントが、宝島社の「このライトノベル作家がすごい!」の桜庭一樹さんのインタビューに出てきます。

 女の子のキャラクターを7人作っていて、それをめぐってさまざまな物語が展開するという感じですね。


「このライトノベル作家がすごい!」110ページ

 このインタビューでは「7人の女の子をめぐる7つの物語」と銘打って、7つの作品を順次発表していく予定であると書いてあります。その7作とは「推定少女」「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「荒野の恋」「ぼくのクドリャフカへ。」及びまだ明かせない3作となっています。これは「野性時代」のインタビューにおける「赤×ピンク」の場合と似ています。しかしここには「赤×ピンク」は含まれていません。

 ということは「赤×ピンク」と「7人の女の子をめぐる7つの物語」は同じ手法を用いながらも、別口の作品である可能性が高いことになります。つまり、

  1. 「赤×ピンク」は1作単品で「3人の私と3つの物語で現実を捉える」作品。
  2. 「7人の女の子をめぐる7つの物語」は7作セットで「7人の私と7つの物語で現実を捉える」作品。

になっているのではないかと考えます。ゲーム的リアリズムの実現方法に「単発であるか」「セットであるか」の微妙な違いがあるのです。

 この考え方で「赤×ピンク」以降の桜庭作品*1を分類すると次の様になります。

  • 単独作品
    • 赤×ピンク(3人の私と3つの物語)
    • ブルースカイ(これも3人の私と3つの物語)

 ただ、なにぶんまだ「7人の女の子をめぐる7つの物語」の全容が見えていないので、とんでもない勘違いをしているかも知れません。「ブルースカイ」をどちらに入れるかも微妙ですしね。間違えていると分かった時は訂正したいと思います。

*1:地方都市シリーズ」という呼び方はあまり広まりませんね…