「プリンセスはお年頃!」に見る「棄てプリ」キャラの原型

プリンセスはお年頃!(1) (HJ文庫)

プリンセスはお年頃!(1) (HJ文庫)

 HJ文庫刊の榊一郎さん著「プリンセスはお年頃!」シリーズは元々「プリンセス・サキュバス!」という榊一郎さんの同人時代の作品です。ちなみに大幅な加筆が行われています。「お年頃! 1」の本文264ページに相当する部分は「サキュバス!(うごうご文庫版第2版)」では114ページしかないので、倍以上の文量になっています。文章もとても読みやすくなりました。

 さて、「お年頃!」が「サキュバス!」の改稿作であることは「お年頃!」のあとがきでも明らかにされているのですが、実は「お年頃!」のあとがきには書かれていない事実がもう一つあります。それは「お年頃!/サキュバス!」が榊一郎さんの出世作富士見ファンタジア文庫刊「スクラップド・プリンセス(棄てプリ)」の原型でもあることです。富士見書房に配慮して「お年頃!」には書かなかったのでしょうが、「サキュバス!」のあとがきにはそう書かれています。

 ……というか、ぶっちゃけ「お年頃!」と「棄てプリ」の両方を読めばナナ=パシフィカの原型、エキノ=シャノンの原型、コリン=ラクウェルの原型って誰でも分かりますわな。以下「お年頃!/サキュバス!」の各キャラが「棄てプリ」でどのように反映されたのかの推測。

お年頃!/サキュバス! 棄てプリ
ナナ パシフィカ、ウイニア、アーフィ・ゼフィリス、(タナロット)
エキノ シャノン、セーネス?
コリン ラクウェル、クリス
バルテリク ユーマ
マヤカ キャロル?
ネリア スィン、クリス?
ソリウ キダーフ
オキプス 秘密♪(笑)

 なんでウイニアやゼフィが?と思われるかも知れませんが、ウイニアって確かごく初期は獣耳の獣人という設定だった記憶があるのですよね。ソースは思い出せませんが。褐色の肌で獣耳。ああ、性格は違うけどナナがウイニアの外見的原型なんだなって思いました。それからゼフィはウイニアから分かれたキャラだったはず。ゼフィのリボンは獣耳だったときの設定の名残です。

 ファミ通文庫刊「まじしゃんず・あかでみぃ」シリーズのヒロイン・タナロットも恐らくナナの流れを汲むキャラです。外見・性格とも良く似ています。ナナのサキュバスとしての(精力を吸い取る)能力はパシフィカでは<律法を破る者>として出てきますが、これはさらに「まかでみ」の羽瀬川鈴穂に、<宵藍の侵奪者>の能力として受け継がれています。

 オキプスについては、書いてしまうと「お年頃!」のオチがばれてしまうので止めておきます。ナナとゼフィを結びつけて考えたのも、外見だけでなく他の理由があるのですが、今は止めておきましょう。「お年頃!」は全3巻とコンパクトな予定だそうですので、ここは是非最後まで読んで「ああ、そういうオチだったのか!」と納得してください。大丈夫、「プリンセスはお年頃!」は「棄てプリ」の既読者でも楽しむことができる、完成度の高い作品であります。