モンマルトルか、モンパルナスか

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

 桜庭一樹さんの「青年のための読書クラブ」を読んでいるところなのですが、ちょっと気になる点がありました。

兄が住むのはモンマルトルの、踊り子に貧乏学生、芸術家崩れなどがひしめいて暮らす、きらびやかな掃き溜めの如き下宿<蜂の巣>だった。


桜庭一樹青年のための読書クラブ」84ページ

 この<蜂の巣>というのはパリに実在する建物です。

 私自身は田舎者でして華の都パリにはとてもではないですが行ったことがありません。しかし偶然にも私は20世紀のパリの画家フェルナン・レジェとシャイム・スーティンが好きでして、そしてこの2人が住んでいたところこそ貧乏画家が集まる<蜂の巣>でありました。

 ところがこの実在の<蜂の巣>はパリの「モンパルナス」にありまして、「モンマルトル」にあるのではありません。作中の時代背景(第一次世界大戦後)を考えても、高級住宅地となりつつあったモンマルトルより乱雑としたモンパルナスの方がふさわしいと思うのですが、果たして桜庭さんはわざとやったのか、うっかり間違えたのか、気になるところであります。混沌(カオス)だ……。