ライトノベルキャラクター造型の極端な例〜「ガルディーン」

どうしてコロナは生まれてきたんですか?(p171)

とか目に入ってきて、
一瞬期待したけど間違いでした・・・orz


Web master speaks from dark side.(つん読日記)-ザ・スニーカー2006年4月号
http://d.hatena.ne.jp/src/20060306#p1

 いまどき「ガルディーン」ネタなんて珍しいと思ったら、ああ、「We Love 火浦功!!」の方ではないですか。お世話になっております。(←私信)

 ところで、

どうしてコロナは生まれてきたんですか?

に、私は「説明しよう!コロナ・フレイヤーは藤波竜之介なのだ!」とモニターの前で反射的に口走ってしまったのですが*1、考えてみるとこれは結構興味深いことです。

 説明し直しましょう。

 角川スニーカー文庫火浦功さんの「未来放浪ガルディーン」というシリーズがあります。正確にはスニーカー文庫の前身である「角川文庫青帯」の時に開始されて、あとでスニーカー文庫に移された作品です。一応今でも続いていることになっていますが、ほとんど死に体です。まぁ、火浦功さんは「本を出さないことがステータス」な人ですから。

 この「ガルディーン」には2人の主役がいます。男装の熱血美少女「コロナ・フレイヤー」と、女装のクールな美少年「シャラ=シャール・酒姫(サキ)」です。このうちコロナのモデルが、実は高橋留美子さんの「うる星やつら」に登場する「藤波竜之介」であることはファンの間では公然の秘密です。さらにいうと、シャラの方のモデルは江口寿史さんの「ストップ!!ひばりくん! 」に登場する「大空ひばりくん」です。*2


 そこの若人。「竜之介とひばりくんって誰?」なんて言わないで、もうちょっと続きを聞いてくださいよ……。


 80年代の「うる星」と「ひばりくん」を知らない方に超簡単に説明しますと、「竜之介」は男装の熱血美少女キャラクター*3、「ひばりくん」はクールな(中にも熱いものがある)女装美少年キャラクターです。

 「モデルっていうか、まんまじゃねーか」

というツッコミがきそうですがそれはさておきまして、「ガルディーン」の主役2人がコミックの登場人物をモデルにして作られていることは、ライトノベルという小説の特徴を考える上で重要ではないか、と思います。コロナもシャラも、竜之介とひばりくんの性格と外見をはっきりと受け継いでいます。しかし竜之介とひばりくんの背負っていた物語はコロナとシャラにはほとんど受け継がれていませんし*4、「ガルディーン」の世界設定は「うる星」「ひばりくん」とは全く異なります。

 これを直接「キャラ/キャラクター」の概念に結びつけるのは少し短絡的かも知れません。しかし、ライトノベルにおけるキャラクターと作品のあり方を考える1つの材料にはなると思います。

 こうした例は他にも、新井素子さんが奇想天外新人賞のインタビューで「ルパンみたいな小説を書きたかった」と言っていることとか、秋山瑞人さんの「イリヤの空、UFOの夏」の構想段階でのタイトルが「UFO綾波」だったこととか色々あります。

*1:アブナイ奴です

*2:この男装の美少女+女装の美少年ネタは「ガルディーン」とほぼ同時に高橋留美子さんも「うる星やつら」の中でやっています。単行本32巻の「渚のフィアンセ」というエピソードがそれで、後の「らんま1/2」に繋がっていくアイデアが見られる作品です。

*3:ちなみに高橋留美子さんの短編「戦国生徒会」には竜之介の原型と思われる「藤波竜子」というキャラクターが登場します。その更に元ネタはプロレスラーの藤波辰爾でしょうか。

*4:というか「ガルディーン」にストーリーらしいストーリーなどもはや無いのですが。