「ゴージャス」!

野性時代」vol.39収録の桜庭一樹さんの短編「ゴージャス」と、桜庭さんの特集を読みました。

野性時代 vol.39 (2007 2) (39)

野性時代 vol.39 (2007 2) (39)

  • 「ゴージャス」

(ネタばれにならない程度に内容に軽く触れます。)

「少女七竃と七人の可愛そうな大人」のプレストーリーで、主人公は「七竃」でスカウトとして登場する乃木坂れな。主人公の年齢という点から見ると「七竃」の後、「赤×ピンク」とほぼ同じ位置づけができる作品です。紛れもない「地方都市シリーズ」の一篇。ただし短編なので七部作には数えないのでしょうね。

    • 「少女」が内包する虚構性について

 桜庭作品において「地方都市」と「大都市」との間の移動には大きな意味が込められています。でも、それだけではないですね。「赤×ピンク」のまゆは大都市に出ても物語上の「まゆ14歳」だし、ミーコは作りものの世界の「SMの女王様」です。「竹田くんの恋人」の水菜も秋葉原まで出てきてもあくまでギャルゲーキャラでしかありません。桜庭作品における「少女」という概念は、大都市に出てきてもなお虚構を抱え込んでいるのです。そしてその構造は「ゴージャス」においてアイドルを演じる乃木坂れなにもやはり共通しています。

    • 母と娘について

「七竃」では川村優奈と七竃との母と娘の関係が描かれていました。が、「七竃」と「ゴージャス」を合わせると、実の母娘とは違う、乃木坂れなと七竃のもうひとつの精神的な母娘関係みたいなものも描かれているような感じがします。この関係は「竹田くんの恋人」における大家さんと水菜の関係に似ています。

    • 大男について

「ゴージャス」には乃木坂れなの親衛隊長として大男が登場しますが、この「大男」というのは桜庭作品に時折姿をみせる類型キャラのようですね。典型的なのが「赤×ピンク」の師範代と「竹田くんの恋人」の鮫口真猪。他にも「Girl's Guard」のマッチョ警官とか「赤朽葉家の伝説」の黒菱の婿とか。「ゴージャス」の乃木坂れなと親衛隊長の会話は「赤×ピンク」におけるミーコと師範代を連想しますし、二人の住んでいるところの設定は「竹田くんの恋人」における主人公たちと鮫口真猪の関係と共通しています。

    • 番外編について

GOSICK」の短編を除けば初めて桜庭さんの番外編的短編を読んだのですが、他作品との関連を妄想……じゃなくて連想できてとても面白かったです。こんなことなら「砂糖菓子〜」の番外編「暴君」「脂肪遊戯」も読んでおけば良かった〜! 「砂糖菓子〜」の新装版がでるようなので、これを機会に収録されないでしょうか。

  • 特集

 対談、インタビュー、解説、評論と、とにかく盛り沢山の内容で、ファンならば買って損はないと思います。「桜庭一樹煩悩の108冊ブックリスト」は「長門有希の100冊」への対抗意識の現われでしょうか?(多分違います)

 小説新潮別冊文藝春秋の連載作品も単行本化が決定しているようなので楽しみです。